【メンズヘア】「白髪染め」や「白髪ぼかし」の品質で気にしたいこと【理髪店】
それは「乳化」という施術にあります。この乳化によって染毛後の色持ちや髪のダメージにも影響します。
乳化とは。。。
白髪染め、白髪ぼかしなどの染毛施術で、染料を毛髪に塗布して放置したあと「洗い流す作業」があります。これは、発色したあと毛髪に残った余分な染料を除去するためです。
染毛剤の各メーカーは、この「洗い流す作業」の最初に「乳化」という施術工程を推奨しています。
「乳化」とは毛髪に付着している染料に徐々に水を加えて揉みほぐし乳白色にすることです。乳化という工程は、頭皮に付着した染料で染まるのを軽減し、染ムラを防ぎ色持ちをよくする役割があります。この乳化の所要時間は、男性のショートヘアーでも1~2分間はかかります。
そのため、当店では染毛の洗い流しを後ろ向きの洗髪作業で行っています(頸部や腰に故障があるお客様には前向きの洗髪作業にさせてもらうことがあります)。
染毛の前処理剤って?
さらに、乳化を促進させる前処理剤というのものがあります。
ちなみに、当店では資生堂の「カラーイコライザー」という前処理剤を使用しています。
この処理剤は染毛で傷んだ髪を修復する機能も付加されています。
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(出典:REVO+ 資生堂 カラーミューズ バイ プリミエンス カラーイコライザー 200ml)
図中の「カチオン化ポリマー」とは「プラスに帯電した高分子」のことです。
マイナスに帯電した毛髪がプラスに帯電した「カチオンポリマー」を吸着して毛髪の表面を整えるという意味ですが、詳しくは、図の出典のリンク先をご覧ください。
難しいことはこの辺にして、右の図の「カラーイコライザーあり」の方がなんて滑らかって感じですよね。
「白髪染め」「白髪ぼかし」は、どうぞ毛髪にやさしいお店をお選びください。
フェードカットの技術とその数理(高校生レベル)科学
今回の記事は、フェードカットの刈り上げの最適な形状を数理的に表現したらどうなるかという内容になります。一応、高校数学レベルの内容になりますが、数式がわずらわしいと思われる方は、結論にあたる 2.4 節からお読みいただいても構いません。
ヘアスタイルが数理科学で扱えるって、なんて素敵なんでしょう!多分、こんなの世界初じゃないでしょうかね。論文にせずにただのブログ記事にするなんて勿体ないくらい。
また、数理科学にご興味の方は「数理科学の小道」のカテゴリー記事もよろしくお願いいたします。
1. フェードカットって何?
まず「フェードカット」をご存知ではない方のために、その意味について説明します。ご存知の方は読み飛ばしてもらっても構いません。
1.1 フェードカットとは刈上げのヘアスタイルの一種
フェード(fade)とは次第に消えていくという意味の英語です。裾(すそ)や耳回りにかけての毛髪の生え際が見えなくなるくらい、刈上げの厚みを薄くするという意味です。
実際はこんな感じですね。
ですから、フェードは刈り上げの濃淡でステップ(段または急激な変化)を作るという意味ではないんですね(よく誤解されがちですが)。
生え際は厚さ 0.3mm ぐらいのバリカン(トリマー)を使います。
これはフェード専用のトリマーで、シェーバーか何かで剃ったような感じになります。すなわち、ほぼスキン(地肌)の状態です。刃の部分を拡大してみると
刃の厚みがかなり薄いことがわかりますね。こういう、特に生え際をスキンの状態にしたものを「スキンフェード」と言います。
1.2 フェードカットはグラデーションがいのち
フェードカットで重要な特徴はグラデーションです。グラデーションとは、生え際から上の方にかけての連続的な濃淡の変化のことです。刈り上げの厚みが増す上の方ほど濃淡が濃くなります。
散髪屋さんではグラデーションのことを「色彩(しきさい)」なんて言い方をします。また美容師さんにグラデーションと言った場合、低い目の段カットを意味することがありますのでご注意ください。
2. グラデーションの数理モデル
2.1 刈り上げの厚さとグラデーションの濃淡との関係
ではこれから、この関係を数式で表していきますね。
厚さを x として、厚さ x のときの濃淡を f(x) とします。
ただし、x = 0 のとき地肌が完全に見えるスキンの状態の濃淡 f の値を 1 とします。すなわち、f(0) = 1 とします。そして、厚さ x が増すと地肌が毛髪に隠れて見えなくなります。地肌が完全に隠れて見えなくなったときの f の値を 0 とします。
ここで、刈り上げの(微小な)厚さ Δx だけ増やしたとします。このとき濃淡 f の変化分を Δf(x) = f(x+Δx) - f(x) とすると
(1)
と表せるものとします。ここで α は毛髪の生える密度や太さに関わる定数で「透過率」とします。いわゆる「透けぐあい」ですね。
(1) 式は厚さ Δx の半透明フィルムを重ねていくというイメージの意味になります。Δx の厚さのフィルムを重ねるごとに α の割合で地肌が見えにくくなるという感じになります。
(1) 式の両辺を Δx で割って、Δx を 0 に近づけます。
(2)
これで一階の線形微分方程式が完成しました。
2.2 方程式を解いていみよう!
(2) の方程式はこんなふうになります。
(3)
C は積分定数ですが f(0) = 1 なので C = 0 です。なので
(4)
ただし、f は x につて単調減少するものとし α < 0 とします。
これで、方程式を解くことができました。
2.3 理想的な刈り上げの形状を求めてみよう!
(4) 式は厚さ x とグラデーションの濃淡 f との関係です。これをもとに、グラデーションの濃淡が一定に変化するときの厚さ x の変化を求めていきます。それが、すなわち刈り上げの形状になります。
まず、 グラデーションの頭皮の位置を p とします。グラデーションが始まる位置を p = 0 、グラデーションが終わって頭皮が見えなくなる位置を p=1 とします。すると、0 < p < 1 の範囲で (4) 式は次のように表せます。
(5)
つまり、p を f(p) 、 x(p) の媒介変数とします。ただし、p < 0 の範囲では f(p) = 0 とします。
(5) 式を x(p) について解くと
(6)
(6) 式 を見ると、p → 1 で x → ∞ (ただし α < 0)となり発散することがわかります。
実際にはこのような発散は起こりません。このような奇妙な結果は、この数理モデルにおいて、刈り上げ部分のすべてが起毛していることを前提にしているためです。実際は、毛髪がある程度長くなると自重で起毛しなくなります。起毛しないときを想定した場合、別の数理モデルを作る必要があります。ここでは、その問題には触れないことにします。
2.4 刈り上げの形状を描いてみよう!
(6) 式を図に示すとズバリ
こんな感じになります。青い実線が刈り上げの形状を表していると思ってください。ただしスケールは適当に設定してあります。
刈り上げの薄い部分、すなわちグラデーションの始まり付近はほぼ直線的に厚みが増します。ところが、グラデーションの半ばから凹型曲線、すなわちコンケーブが目立ってきます。
しかし、実際は頭皮の形状自体が凸型曲面(コンベックス)なので、盆の窪(ぼんのくぼ:頸部(けいぶ)の付け根で延髄(えんずい)にあたる場所)より上は凸型の形状になります。
特に刈り上げの厚い部分は、厚みの変化に対する濃淡変化の感度が低くなるので形状を優先してカットします。
では、数理的なお話はここまでとしますね。
さらに厳密で複雑な数理モデルがあるかもしれませんが、方程式が複雑になり手計算で解けなくなる場合も考えられます。これから先は読者の皆さんにお委ねします。
3 理美容技術は自然科学である!
「〇〇は科学である」なんていう言葉はよく目にしますが、人文科学も社会科学も科学にはかわりありません。人間が営むところであればスピリチュアルなものでさえも人文科学のくくりにされるくらいですから。
しかし、私はもっと大胆に理美容技術は「自然科学」であると提言したいんですね。理美容の専門知識のある方の間では、ヴィダル・サスーン氏はよくご存じだと思います。氏はそれまで経験のみに依存したヘアカット技術に再現性の高い理論を最初に築きました。
また、斉藤隆一氏、松岡達夫氏や札埜義造氏により、日本独自の理容技術が確立されています。
これからも、理美容技術の自然科学としての価値を高める余地は十分あると期待しております。
コームオーバーと震災刈りってどう違うの?
似てますが、由来からして違うものです。
最近、コームオーバーや震災刈りがバーバースタイルとして目立ってきました。
冒頭では違うって言いましたが、実際はそのハイブリッドが型というか折衷型のようなスタイルにすることも多いです。ですから、それぞれの違いが曖昧になるのは仕方がないですよね。
じゃあ、本来の違いは何でしょうか?まずはそれぞれの定義を明らかにしたいと思います。
コームオーバー (comb over) って何?
これ、実はwikipediaの英文記事になってまして、冒頭部分を簡単に和訳すると
❝一般的にコーム・オーバーとは、脱毛範囲をできるだけ目立たなくするために、長く伸ばした髪でおおってクシでとぎつけるというヘアスタイルである。❞
(出典:wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/Comb_overより引用)
著作権上画像は出しませんが、いわゆるバーコードヘアーのことだったんですね。
いまポピュラーなコームオーバーは、前額髪際隅部(ぜんがくはっさいぐうぶ )あたりで分け目を作って、分け目の小さい方を極端にフェードカット(fade cut:薄く短く刈り上げる)するというスタイルです。つまり刈り上げてますから、分け目付近に寝る毛髪が残るわけです。
震災刈りって何?
このスタイルの起源は、大正の関東大震災の時代に遡る非常に歴史あるスタイルなんです。スタイルの特徴を先に言いますと、コームオーバーの分け目の小さい方をフェードカットではなく、すべて起毛するくらい短く刈ってしまうものです(ここは、弊店のインスタを参照ください https://www.instagram.com/p/BnqA88RBbkU/)。
震災刈りが提案された大正時代は電動バリカンはまだポピュラーではなく、ハサミのみを使ってました。日本では戦後昭和20年代に普及した電動バリカンもなかなか貴重なものだったそうです。
最近の電動バリカンは音波式になり、刃の往復の周波数が飛躍的にアップしました。このために、ハサミだけでは作れないような刈り上げの形状や濃淡をより自在に作り込むことができるようになりました。
現在のバーバースタイルが注目される理由は、バリカンの性能向上のおかげじゃないかと思いますね。